家を建てたい人のための基礎知識:土地の「地目」ってなに?
ここの空いている土地に家を建てようと思ったときとても大切なことがあります。それは「家を建てられる土地かどうか」を見極めることです。
そのカギとなるのが、「地目(ちもく)」です。地目とは、その土地が登記簿上どのような目的で使われているかを示す区分のこと。簡単に言えば、「この土地は何のために使われている土地なのか」を表したものです。
実は、地目によっては建物を建てることができなかったり、建てるために手続きが必要だったりします。今回は、これから家づくりを考えている方に向けて、地目の基礎知識をわかりやすく解説します。どんな種類があるのか、どの地目なら家が建てられるのか、農地や山林に家を建てたいときに何を注意すべきかまで、詳しくご説明します。
1. 地目にはどんな種類があるの?
日本の土地は、登記簿で「23種類の地目」に分類されています。これは不動産登記法に基づいて法務局に登録されているもので、その土地が“主に何に使われているのか”を表します。たとえば「田」「畑」と書いてあれば、その土地は農地であり、基本的には農業に使うことが前提となっています。
それでは、それぞれの地目について簡単にご紹介していきます。
1. 宅地(たくち)
住宅や店舗、事務所などの建物が建てられる土地です。建築に関する制限が少なく、インフラ(上下水道・ガス・電気など)が整っていることが多いため、家を建てるうえで最も安心できる地目です。
2. 田(た)
お米をつくるための水田です。水を張って稲作をするための農地であり、基本的には家を建てることはできません。住宅に転用する場合は農地転用の手続きが必要です。
3. 畑(はたけ)
野菜や果物など、水を張らずに作物を育てる農地です。田と同様に、住宅として使うには農地転用が必要です。
4. 山林(さんりん)
木が生えている山や丘などの自然林。伐採や植林を行うことで林業に使われる土地です。こちらも住宅用地にするには地目変更が必要です。
5. 原野(げんや)
人の手が入っていない、自然のままの土地です。雑草や低木が生えている未開発の土地で、将来的に宅地として開発されることもありますが、インフラの整備が必要なケースが多いです。
6. 牧場(ぼくじょう)
牛や馬、羊などの家畜を放牧するための土地です。牧場として管理されている限りは家を建てることはできません。
7. 鉱泉地(こうせんち)
温泉など鉱泉が湧出している土地です。旅館や温泉施設に使われることもありますが、一般的な住宅建築には向いていません。
8. 池沼(ちしょう)
池や沼など、水を貯める場所として使われている土地です。自然の池もあれば人工的に造られたものもあります。
9. 沼地(ぬまち)
湿地帯など、常に湿った状態にある土地です。住宅建築には不向きで、地盤改良や排水工事が必要になります。
10. 墓地(ぼち)
お墓がある土地です。家を建てることはできませんし、購入するにも制限が多く、用途は限られます。
11. 境内地(けいだいち)
神社やお寺の敷地にあたる土地です。宗教法人が管理しており、一般の住宅建築には使えません。
12. 道路(どうろ)
公道・私道問わず、道路として使われている土地です。住宅用地としては利用できません。
13. 用悪水路(ようあくすいろ)
農業用の用水路や排水路がある土地です。地目上は公共用地であり、建物を建てることはできません。
14. 運河用地(うんがようち)
船が通るための運河や水路の敷地。こちらも一般住宅の建設には使えません。
15. 水道用地(すいどうようち)
上下水道施設がある土地です。公共性が高く、住宅建築には使えません。
16. 学校用地(がっこうようち)
学校や教育施設が建っている土地。教育目的以外での使用はできません。
17. 公園(こうえん)
公的な遊園地や緑地として整備されている土地です。
18. 鉄道用地(てつどうようち)
線路や鉄道施設がある土地。宅地には使えません。
19. 住宅用地(じゅうたくようち)
実質的には宅地と同義で、住宅が建っている、または建てられる土地です。
20. 事務所用地(じむしょようち)
事務所や店舗などが建っている土地です。
21. 工場用地(こうじょうようち)
工場や倉庫などが建っている土地です。住宅には基本的に不向きですが、用途地域によっては建築可能なケースもあります。
22. 公衆用道路(こうしゅうようどうろ)
多くの人が通行できる道路。住宅建築には使用できません。
23. その他
上記に当てはまらない用途の土地。判断が分かれるため、詳細は法務局や自治体に確認が必要です。

2. 家を建てられる地目とは?
23種類ある地目のうち、すべての土地に家を建てられるわけではありません。むしろ「住宅を建てられる地目」は限られています。ここでは、実際に住宅を建てることができる主な4つの地目について、それぞれの特徴や注意点を詳しくご紹介します。
■ 宅地(たくち):住宅用としてもっとも安心な土地
「宅地」とは、その名の通り、住宅が建っている土地、あるいは住宅を建てることを目的とした土地です。すでに家が建っている土地を購入する場合や、造成された住宅分譲地などは、この宅地であることがほとんどです。
宅地の最大のメリットは、建築に関する法的な制限が比較的少なく、安心して家を建てられるということ。上下水道・電気・ガスなどのインフラが整っていることが多く、建築前の準備にかかる時間やコストも抑えやすいです。
また、土地の造成状態も安定しているため、地盤改良などの追加工事が不要であることも多く、予算計画が立てやすいという利点もあります。これから家を建てる方にとって、もっとも安心できる地目と言えるでしょう。
■ 雑種地(ざっしゅち):条件付きで建築が可能な柔軟な地目
雑種地とは、「宅地」でも「田畑」でもない、さまざまな用途で使われている土地のことを指します。たとえば、駐車場、資材置き場、倉庫敷地などが雑種地として登記されていることがあります。
雑種地は、そのままでは建築ができないケースもありますが、都市計画法や建築基準法に基づいて建築確認が下りれば、住宅を建てることも可能です。
注意点としては、用途地域(市街化区域や調整区域など)によっては住宅の建築が制限されている場合があるということ。購入前には必ず自治体や不動産会社、工務店などと相談し、建築の可否を確認しましょう。
■ 農地(田・畑):農地転用の手続きで建築が可能に
一見、広くて整った土地でも、「田」や「畑」と地目が記載されている場合は、農業用地としてしか使えないことになっています。つまり、そのままでは家を建てることができません。
しかし、所定の手続きを踏んで「農地転用」の許可を受け、宅地として地目変更をすれば、住宅を建てることができます。農地転用については次章で詳しく解説しますが、手続きには時間や費用がかかるため、スケジュールには余裕を持ちましょう。
また、農地はもともと水を含みやすい地盤であるため、住宅を建てるには地盤改良などの追加工事が必要になることもあります。購入前にしっかりと地盤調査を行うことが重要です。
■ 山林:自然豊かな立地に家を建てたい人に
「山林」という地目も、そのままでは住宅は建てられませんが、条件を満たして整備を行い、地目を宅地へ変更すれば建築が可能です。
山林は都市部の宅地に比べると広くて価格が安いケースが多く、自然の中で静かに暮らしたいという方に人気があります。ただし、インフラ整備(上下水道や電気の引き込み)が必要だったり、土地の造成が必要だったりと、初期費用や手間は多くなりがちです。
また、山林の土地は土砂災害や浸水などの自然災害リスクがあることも。必ずハザードマップを確認し、必要に応じて土留めや排水の対策を検討しましょう。
このように、住宅を建てることができる地目は「宅地」だけではありませんが、どの地目でも簡単に家が建てられるというわけではありません。地目によっては手続きや整備が必要だったり、将来的なリスクがあったりするため、土地選びの段階から慎重に確認を進めていくことが大切です。

3. 田んぼや畑に家を建てたいときは?【農地転用とその手続き】
「親の土地が広い田んぼだから、その上に家を建てられないかな?」「自然豊かな畑を買って、そこでのんびり暮らしたい」――そんなご希望をお持ちの方も少なくありません。
しかし、地目が「田」や「畑」になっている土地、つまり農地には、原則として家を建てることはできません。これは、食料自給や農業の保護を目的とした「農地法」によって厳しく制限されているためです。
では、田んぼや畑に住宅を建てるにはどうすればよいのでしょうか?その答えが「農地転用」という手続きにあります。
■ 農地転用とは?
農地転用とは、農地を農業以外の目的に使うこと、たとえば住宅や店舗などを建てるために使うことをいいます。この農地転用を行うためには、農地法に基づいて市区町村の農業委員会、または都道府県知事の許可を受けなければなりません。
農地転用には以下のような種類があります。
第3条転用:農地のまま、他の農業者に売却や貸し出しをする(住宅転用ではない)
第4条転用:所有者が自分の農地を住宅用地などに使いたい場合(自己転用)
第5条転用:農地を他人に売却し、その人が住宅用などに使う場合(譲渡転用)
住宅を建てたい場合は、第4条もしくは第5条の転用にあたります。
■ 転用には許可が必要です
農地を勝手に転用することはできません。無許可で造成したり建築した場合、違法行為となり、最悪の場合は原状回復(もとに戻す)を求められることもあります。
また、農業振興地域(=農業に特に力を入れている地域)に指定されている農地は、転用そのものが難しく、まずは「除外申請」をしてその地域から外す手続きをしなければなりません。
■ 手続きの流れ(例)
農地転用の一般的な手続きの流れは次の通りです。
農地転用が可能かどうかを市区町村に相談
必要書類の準備(登記簿謄本、地図、土地利用計画など)
農業委員会への申請
必要に応じて都道府県の許可(500㎡以上など)
許可がおりたら、地目変更の申請(農地→宅地)
建築確認申請・着工
この一連の手続きには、おおよそ2〜4ヶ月程度かかることが多く、時期によってはさらに長引く可能性もあります。そのため、農地を検討する場合は、スケジュールにゆとりを持つことが重要です。
■ かかる費用と準備するべきこと
農地転用には以下のような費用がかかる可能性があります。(例)
転用許可申請の手数料
農業振興地域除外手続きにかかる費用
地盤調査・地盤改良工事費用
上下水道の引き込み費用(未整備の場合)
造成工事費用(地盤の高さ調整や擁壁など)
また、農地は水分を含んだ柔らかい地盤が多く、しっかりと地盤調査を行い、必要に応じて改良工事を行わなければ、安全な住宅づくりができません。
■ メリットとデメリット
農地の転用には手間と時間、費用がかかりますが、そのぶん以下のようなメリットもあります。
市街地に比べて広い土地が手ごろな価格で手に入る
自然に囲まれたゆったりとした生活が実現できる
家族用の畑やガーデニングスペースも確保しやすい
一方で、注意すべきデメリットも。
インフラ(上下水道・電気など)が未整備なことが多い
手続きに時間がかかり、すぐに着工できない
将来、売却が難しい場合もある(買い手が限られる)
このように、農地に家を建てるためには、入念な計画と手続きの知識が必要です。不安な点があれば、市区町村の農業委員会や法務局、信頼できる工務店や不動産会社に相談し、ひとつひとつ確認しながら進めることをおすすめします。

4. 山林に家を建てたいときの注意点【自然と暮らすために必要なこと】
最近では、自然に囲まれた静かな場所での暮らしに憧れ、「山の土地に家を建てたい」というご相談が増えています。確かに、山林は広くて価格も手ごろなことが多く、ゆったりとした時間が流れる理想の生活が実現できそうです。
しかし、地目が「山林」となっている土地に家を建てる場合には、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、山林に家を建てるために必要な手続きや、考慮すべきポイントを詳しくご紹介します。
■ 山林に家を建てるには、まず「地目変更」が必要
山林は、木の伐採や育林などの目的で使われる「林業用地」として扱われており、基本的にはそのまま住宅を建てることはできません。
家を建てるには、まずその土地の用途を変える「地目変更」が必要になります。つまり、「山林」→「宅地」への変更です。この変更は、土地を使う目的が明確であること、建築の準備が整っていることなどが条件となり、法務局に変更登記を申請することで行われます。
■ 都市計画区域内なら「開発許可」も必要に
土地が都市計画区域内にある場合は、さらに「開発許可申請」という手続きが必要になります。これは、住宅地を新たに造成したり、一定面積以上の土地を開発する場合に必要な許可で、都市計画法に基づいて市区町村や都道府県から取得します。
開発許可が下りないと、いくら建てたいと思っても工事を始めることができません。特に山間部や斜面地では、この申請が厳しく審査されることがありますので、早めに専門家に相談することが大切です。
■ インフラ整備にはコストと時間がかかる
山林はもともと住宅地として整備されていないため、生活に必要なインフラ(電気・水道・ガス・道路など)が整っていないことがほとんどです。そのため、以下のような準備が必要になります。
電気:電力会社に引き込み申請。距離があると費用が高額になることも
水道:公共水道が通っていなければ、井戸掘削や貯水タンクの設置が必要
下水:下水道がない場合は、合併浄化槽などの設置が必要
道路:車両の進入路がない場合、私道整備や舗装工事が必要
これらのインフラ整備には、想定以上の費用がかかる場合もあるため、土地を購入する前に概算見積もりを取り、予算に組み込んでおくことが重要です。
■ 地盤や自然災害への対策も忘れずに
山林は斜面になっていることが多く、地盤が不安定なケースも少なくありません。必ず地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良や擁壁工事を検討しましょう。
また、山間地は以下のような自然災害リスクにも注意が必要です。
土砂崩れ:周囲の地形や雨量によっては大きな被害になる可能性も
浸水・河川氾濫:近くに川がある場合は特に注意
落石・倒木:敷地内の樹木の管理も大切
自治体が発行する「ハザードマップ」を確認し、災害リスクの低い場所を選ぶことが、安心して暮らすための第一歩です。
■ 山林で暮らすメリットとデメリット
【メリット】
広い土地が比較的安価で手に入る
自然に囲まれた静かな環境でのびのび暮らせる
ガーデニングや家庭菜園、アウトドアが楽しめる
【デメリット】
インフラ整備に費用がかかる
手続きや工事のハードルが高い
冬の積雪や災害時の備えが必要
山林に家を建てることは簡単ではありませんが、しっかりと準備をすれば、自然と調和した豊かな暮らしを手に入れることができます。「どんな暮らしがしたいのか」「何を大切にしたいのか」を明確にしたうえで、現地調査や専門家との相談を重ねていきましょう。

5. まとめ:後悔しない土地選びのために、地目を正しく理解しよう
これまでの章で見てきたように、「地目」は土地の基本的な性質を示すものであり、住宅を建てられるかどうかを大きく左右する非常に重要な情報です。特に農地や山林のような、住宅用地ではない土地を検討する場合には、手続きや整備に手間と費用がかかることをしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、これから土地を探す方が「後悔しない土地選び」をするために、最低限押さえておきたいポイントを整理しておきます。
■ 地目の確認は「登記簿謄本」で
土地の地目は、法務局で取得できる「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されています。気になる土地があれば、法務局や工務店、不動産会社を通して、まずは登記簿で地目を確認しましょう。
登記上の地目と実際の利用状況が異なっていることもあります。たとえば、見た目は空き地でも登記上は農地であることがあります。見た目や話だけで判断せず、書類での確認が基本です。
■ 建てられるかどうかは「用途地域」や「都市計画区域」も確認
地目のほかにも、住宅が建てられるかどうかは、「用途地域」や「都市計画区域内かどうか」によって制限されることがあります。これらは市区町村の都市整備課などで確認できます。
また、「市街化調整区域」と呼ばれる区域では、原則として建築が制限されており、農地や山林などでは建築が非常に難しいケースもあります。購入前に必ず行政窓口で相談することが大切です。
■ インフラ整備の有無と費用も要チェック
特に農地や山林は、上下水道・電気・ガスといったインフラが整っていないことが多く、整備には多額の費用がかかる可能性があります。建物本体にかけられる予算だけでなく、土地の整備費用も含めた「総予算」で土地選びをするようにしましょう。
■ 手続き・調査・申請はプロに相談を
地目変更や農地転用、開発許可などは専門的な知識が必要なため、初めての方がすべてを自分で進めるのは困難です。市役所や信頼できる工務店、不動産会社に相談しながら、必要な手続きや見積もりを段階的に確認していくことが、失敗しない土地購入のコツです。

地目って結局なに?家づくりの前に知っておきたい大切なポイント
土地探しや家づくりを考え始めたとき、意外と知られていないのが「地目(ちもく)」という存在です。地目とは、土地が現在どんな目的で使われているかを示す登記上の分類のことで、全部で23種類あります。たとえば「宅地」なら建物を建てることができますが、「田」や「畑」のままでは家は建てられません。まずはこの“地目”を確認することが、家づくりのスタート地点なのです。
特に注意が必要なのが、農地(田・畑)や山林に家を建てたいとき。これらはそのままでは住宅用に使えないため、「農地転用」や「地目変更」の手続きが必要になります。また、水道や電気といったインフラが整っていないケースも多く、事前の調査や準備が重要です。
一方で、こうした土地は広くて価格も抑えめなことが多く、自然と暮らしたい方には魅力的な選択肢です。正しい知識としっかりした準備があれば、理想の暮らしを叶えることもできます。
大切なのは、「この土地に家が建てられるのか?」「どんな準備が必要か?」を自分だけで判断せず、信頼できる工務店や不動産会社に相談すること。HASEMOKUでは、土地選びから建築まで、安心して進められるようサポートしています。
地目を正しく理解することは、失敗しない土地選びの第一歩。理想の家づくりをスムーズに進めるためにも、まずは“土地の性格”を知ることから始めてみましょう。
当社は、経験豊富な一級建築士が詳細な現地調査と綿密な打ち合わせをして、お客さまのご希望に沿った質の高い提案やコーディネイトのお手伝いをさせていただきます。
また、詳細な見積りを行うため、お客さまのご要望で行う追加変更工事以外の追加料金は発生しません。
お客さまのご要望で行う追加変更工事が発生した場合も、都度お見積りをさせていただき、ご納得されたうえで工事を行います。
広島県庄原市・三次市で新築・注文住宅やリフォーム・修繕をお考えのお客さま。
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